ちょっといっぷく 第52話
第52話 日の丸物語
白地に赤く 日の丸染めて ああうつくしや 日本の旗は
(尋常小学唱歌 明44.5)
前稿で地球の裏側、最果ての地、ポルトガルで仰ぎみた日の丸の旗にちょっと触れた。
もうずいぶん昔の話になるが、中曽根康弘氏が、未だ若く民主党(今の自民党の前身)の青年将校として活躍中、島原の体育館で演説会があり、聞きに行ったことを思い出した。
一つだけ今でも印象に残っているのは愛国心についてである。
彼の主張は、愛国心は理屈ではない。例えば茫々たる南氷洋あたりの大海原で、一隻の船に出会う。その船が段々と近づいてくると、船尾にひるがえる日の丸の旗が目に入る。
「あ~日の丸だ。」と心にジーンと伝わるものがある。これが愛国心だと言っていた。
オリンピックでスタジアムのメインポールに、君が代とともに掲揚される日の丸の旗を見て、胸に熱いものがこみ上げてこない者はいないだろう。
昨年あたりから中教審で、愛国心はダメだが『国を愛する心』という表現なら結構。といった言葉の遊びみたいな議論が続いている。
むつかしいことは我々には分からないが、愛国心を法律で規定したり、理屈で定義したりする必要はないのではないか。愛国心の原単位は、家族愛であり、郷土愛なのだから…。
自然発生的に人の心に芽生えてくるものであろう。
1999年8月国旗国家法が成立した。
JR九州では、管内の330駅で祝日には駅に日の丸を掲揚することを決めた。と発表。
昨年末、欧州のクラッシック音楽界の頂点に立ち「ウィ-ンの顔」に迎えられた小澤征爾氏は、スクーターに日の丸をつけて欧州各地を巡り、世界で「音楽武者修行」を続けたという。
日の丸の旗については、忘れえぬ思い出がある。
昭和57年6月、島原市において日教組全国大会が4日間にわたって開催された。
右翼の宣伝車が終日なりたて騒然とした雰囲気であった。ある日、右翼の幹部なる人物が会社を訪ねてきた。「あなたのところは日の丸の旗を掲げてもらってるのは有難いが、その旗は汚れてきたない。新品の旗を寄贈するから取り替えてほしい。」との申し入れ。当方は、なにも右翼に頼まれて国旗を掲げてるわけではないのだが、指摘されて早速新品に取り替えた。感心したのは、大会が終わったその日、その幹部が再び来社し、「大変お騒がせして申し訳なかった。われわれの活動はすべて終わったので報告に来た」と実に折り目も正しい挨拶に、一服の清涼感さえもいだいたものである。
もう一つ、これは笑い話に属するのだろうが、長崎でガソリンスタンドを建設、消防署の竣工検査での話である。
ガソリンスタンドは危険物を取り扱うのでいろいろの規制がある。例えば、事務所のカーテンは布製の場合、燃えにくいよう耐熱性のものを使用せよとある。問題になったのは日の丸の旗を耐熱性のものにするか、降ろせという。
なりたての若い署員で、仕事熱心の余りこんなことを言い出したんだろうが、こちらは前代未聞の申し入れであり大議論となった。
消防庁長官に見解を問う質問状を出すぞ。と言ったら「上司と相談します」ということでおとがめなしとなった。
法律は守らねばならないが、実情に即した運用面にも配慮願いたいものだ。
(元島原商工会議所会頭)
2003年2月11日